スカッシュを愛するヤングエグゼクティブ

スカッシュデー・ウィークが終了しましたが、プロジェクトの一環としてこのコーナーを企画致しました。既にお手元に届いている日本スカッシュ協会機関紙80号にも掲載されている記事ですがご紹介いたします。
現在、社会的にご活躍されている方々の中にも沢山のスカッシュを愛している方がいらっしゃいます。卒業してもスカッシュを続けている方々が生き生きしていて素敵です。  ご登場頂きました方々のように全国でスカッシュサークルや、チームが沢山出来れば将来的にはクラブや実業団などの対抗チーム戦に繋がり、より多くの方々がスカッシュを楽しんで頂ける環境になると信じています。これからも全国のスカッシュプレーヤーにエールを送りたいと思います。

スカッシュデー・スカッシュウィーク実行委員長 宮城島真知子

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スカッシュチャンピオンからヤングエグゼクティブへ

小林 僚生 選手(こばやし りょうせい)

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プロフィール
年齢:22歳
スカッシュ歴:約15年間(7歳から)
卒業後の就職先:アマゾンジャパン オペレーションマネージメント

2013年全日本選手権、3連覇中の福井裕太を仕留めて初優勝、当時史上最年少18歳で日本王者となった小林僚生選手。その後アメリカのニューヨーク州ロチェスター大学に進学し、カレッジリーグの中堅だったロチェスター大学をあっという間に強豪校に押し上げました。そして昨年は、全米選手権で11年間全米大学王者に君臨していたトリニティ大学を倒し、その後僅差で優勝は逃すも、アメリカンカレッジリーグランキングのトップ校になったのです。小林選手は直後の個人戦でもファイナリストとして最後までシーズンを盛り上げました。
小林選手がロチェスター大学に入学し、1年後に同じく日本から遠藤共峻選手がチームメイトになって以来、ロチェスター大スカッシュチームは史上初記録を打ち立て続けています。結束の強さを感じるチームに恵まれたのも、チームを引っ張り、盛り上げてきた2人の日本人選手の存在の相乗効果だと、現在2人が共にキャプテンを務めている事からも計り知る事ができるでしょう。
そんな中、今春卒業を控えた小林選手は、現在アスリートやそのアントラージュ(周囲の関係者)にとって大きな課題である、アスリートのセカンドキャリアの理想的な答えの一つを打ち出したとして注目を浴びています。
現在、大学リーグ最後のシーズンに全身全霊をかけて挑む小林選手に、チャンピオンから未来のヤングエグゼクティブとして今彼が心に思っている事を語ってもらいました。

スカッシュとの出会い
スカッシュに出会ったのは、趣味でスカッシュをやっていた父親にスポーツクラブに連れられて行って、遊びでやってみたら面白かったからです。

スカッシュの競技としての魅力
バスケットボールやテニス、その他多くのスポーツと異なって、体格の条件が特にない。極端でない限りどの体格でも有利、不利な点があるので、自己・ライバル分析をしながらクリエイティブに戦えば不利な点をカバーし、逆に有利な点に繋げられるところです(テニスでは背が低いだけで、平均的に背が高い外国人選手と比べて特にサーブで大きく不利になる)。
また、競技面では数え切れないほどの多様なプレースタイルがあるところ。考える力・新しいアイディアを生む力を身につけ、試合中に生かすことで相手が予想していないプレーをすることができる。
スカッシュでは相手と非対面で同じ方向を向いてプレーし、相手が常に前後左右にいるので、プレー中とても頻繁に騙し合いが起きるのもスカッシュならではの面白さです。

スカッシュをとりまく状況、現在そしてこれから
世界的に(特に日本では)他のスポーツと比べて競技人口が少ない方なので、努力次第でトップに登り詰められる可能性が多くある。また、マイナースポーツだからこそスカッシュ愛好者が全国から一つの場所に集まる機会が多く、輪を広げることができる。また、自分自身でコミュニケートする機会を作ることができれば更に楽しさも広がる。ジュニアは「スカッシュ×国際的教育(主に英語)」を充実することができれば、他の多くのスポーツよりアメリカやイギリスの世界でもトップレベルの大学に進学できる可能性がある。
私は17歳の頃までこの情報に触れる機会がなく、当時自分が日本の大学に進学する理由が見つからなかったので、大学に入学するつもりはあまりなかったけれど、2011年に参加したUSジュニアオープンにて現在在学中のロチェスター大学と、ハーバード、イエール、アメリカNo.1のスカッシュ強豪校のトリニティー大学からスカウトを受けることができました。
ロチェスター大学では中学生の頃から興味があった経営学を専攻していて、過去3年間とても興味深いことをたくさん学んできました。

スカッシュへの想い
過去15年間、選手としてスカッシュを始めた1年生の頃から今まで、一度もスカッシュを嫌いになったことがないほど、私はスカッシュが大好きです。
個人的な意見ですが、このスポーツは本当に奥が深いと思います。私はプロ選手ではないので彼らほどスカッシュをまだ理解できていないと思いますが、自分が直接感じているこの奥深さが、大好きな理由ではないかと思います。幼い頃からジュニアを卒業するまで、特に体格も運動神経も良くなかった自分は、どのジュニア大会に出場しても毎回一番小柄で足の速さも普通の選手でした。試合で勝って、活躍していくにはどうしてもプレー中に深く考え、効率が良くトリッキーなショットを打ち、相手の逆をつくスタイルでプレーをしなければなりませんでした。その分大きなリスクを背負わなければいけませんが…、特別に不利な体格面をカバーし、珍しいプレースタイルで戦うことが何よりも楽しかったです。アメリカの大学リーグでプレーし始めた3年前からは自然と身体的に強くなり、小柄な分コート内で俊敏に動けるので体格的に不利と感じることはなくなりました。
大学では毎日元世界4位のコーチ(マーチン・ヒース氏)に教わりながらチームメイト達と練習し、それまで以上に自分のプレースタイルを磨きながら楽しくスカッシュをしています。スカッシュは、自分の考え方次第でどんな体格の選手でも強くなれますし、何よりもPDCAサイクルのような、「考える─試す─成功 or 失敗」の試行錯誤を重ねることで自分オリジナルのプレースタイルを作り上げることができます。私の私見ですが、どのスポーツも、基本的にはコーチから教えられる通りにプレーし、順調に強くなるのが標準です。しかし私はコーチと自分自身の考えを二人で議論しながらオリジナルなプレースタイルを作り、強くなり、活躍することで初めて本当に楽しくスカッシュをできるのではないかと思います。
引退後、私はスカッシュをいつか日本のメジャースポーツにしたいと本気で思っています。
来年の5月にロチェスター大学を卒業し、その後夏から就職する私は、将来プロ選手としてではなくビジネスパーソンとして日本スカッシュ界に貢献したいと考えています。
幼い頃は世界チャンピオンになることを目標にしていましたが、高校生になってからは考えを180度転換し、今の考えを持っています。
このため、高校3年生の時点で大学生として世界一良い環境で選手生活を送れるアメリカの大学に進学することを決め、入学後は多くの専攻を選べる中、迷わず経営学を専攻しました。これまでオリンピックに何度も新競技候補として挑戦し、毎回あと少しのところで選出?されてこなかったスカッシュ。
東京オリンピックで新競技として選ばれていたら、スカッシュの認知度が自然と上がり人気も出てきたと思いますが、実際にはその夢が叶わなかったので、将来私が日本スカッシュの本格的な発展となる先駆者になりたいです。

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丹埜 倫 選手(たんの ろん)

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39歳/株式会社R.project 代表取締役

スカッシュに最初に出会ったのは5歳くらいの頃でしょうか、オーストラリア人の父が趣味でプレーしていたので、たまに遊んでもらっていました。
当時の日本のスカッシュのメッカDoSports新宿で、大人に混じってコートに入っている姿を珍しがられていたのを思い出します。
当時は本当にたまに遊ぶ程度でしかなく、本格的にプレーを始めたのは大学に入学してからでした。僕が在籍した慶応大学は当時インカレ個人戦で連覇をしていて、先輩たちを目指して夢中になって練習しました。
大学を卒業する頃には日本のベスト8くらいになっていたので、卒業後もなんとか継続したいと思いました。両立できる仕事を探す中で出会ったのが株のトレーダーという仕事でした。トレーダーは早朝に出社し、取引時間中は精神的にも追い込まれる仕事ですが、比較的早い時間に業務が終了する上、接待する相手もいないため、夜をスカッシュのトレーニングに費やす事ができました。
そうやって証券業とスカッシュの二束のわらじを履き、2001年〜2004年までは日本代表としてアジア選手権や世界選手権にも出場できました。
その後、選手としてのピークが近づくにつれ、スカッシュの普及に興味を持ち始めました。
2006年にR.projectという会社を設立し、スカッシュコートつきの合宿施設(サンセットブリーズ)の運営を始めました。
以来、スカッシュ協会や関係者の多大な応援の元、様々な合宿、強化練習会、国体デモンストレーション競技、全日本選手権など、様々なスカッシュのシーンで施設を使っていただいています。合宿の閑散期に地元の子供たちにもスカッシュを体験させたいと思い、小さく始めたスクールは、スカッシュライフの伊藤、松澤の両コーチによる献身的な活動もあり、今では日本を代表するジュニアチームになりました。
今後、R.projectでは日本各地にある遊休施設を活用して合宿事業を拡大しながら、そこを拠点にインターナショナルスクールを展開していきます。
これまでずっとスカッシュと共に歩んできた人生なので、息の長い形でスカッシュ界に恩返しをしていきたいと思っています。

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戸部 輝彦 氏(とべ てるひこ)

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28歳/JFEスチール株式会社 製造部エンジニア

キャリア
浅野高校→東京大学工学部応用化学科→同大学院工学系研究科応用化学専攻→JFEスチール株式会社

スカッシュとの出会い
中学1年生の時、母にコータコートのジュニア体験に誘われたのがスカッシュを始めたきっかけです。

スカッシュの魅力や想い
【スポーツとしての魅力】
30分でも十分な汗がかけるほどの豊富な運動量と、思いっきりボールを打ち抜いた時の爽快感で、心身ともにリフレッシュできる点です。
【競技としての魅力】
動きとボールの速さで相手を振り切るスタイル(私はこちら寄り)から、ボールコントロールと相手を惑わすテクニックのみでそれを躱すスタイル(何度も悔しい思いをしました)まで、幅広いプレースタイルがあり、老若男女を問わず競技として楽しむことができる点です。
【最大の魅力】
先にも述べましたが、スカッシュは老若男女を問わず楽しめるスポーツであるため、練習や試合を通じて様々な人との出会いがあります。会社や学校に通うだけでは出会うことができない幅広い年齢層の人たちと地域や国を越えた交流があり、また、競技人口が少ないが故に、密度の高い交流となります。私自身15年間スカッシュを楽しむ中で、生涯の友人、人生のお手本となる方々、伴侶を得ることができました。このスカッシュを通じて出会える人たちが最大の魅力だと思います。

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高橋 司 氏(たかはし つかさ)

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46歳/日本マイクロソフト株式会社 シニアアカウントエグゼクティブ

キャリア
大学を卒業し、IBMに21年間在籍し、エンジニアからセールス、営業部長を経験し、退職後、外資系ITコンサルティング会社を経て、現在日本マイクロソフト株式会社にてセールスの仕事をしています。

スカッシュとの出会い
2011年4月にスポーツクラブTIPNESSのジムエリアでワークアウト中にスカッシュ体験レッスンのお誘いを受けて、ラケットなど必要なく身軽に参加でき、時間があったので参加しました。30分程の初歩的レッスンでしたが、思っていたよりも、なかなか強い打球が打てず、リズミカルにラケットを振れなかったのを記憶しています。お腹周りについた脂肪を燃焼させるためにスポーツクラブに通い始めて2年程経ち、身体もシェイプされ、何か習おうかと思っていた時にちょうどよくお誘いいただき、手軽に始められるスポーツでしたので、月曜日夜のレッスンからスタートすることにしました。今では、毎週水曜日の夜と土曜日の二つのレッスンを受けて、日曜日午前中にスカッシュの練習会をすることをルーティンにしています。

スカッシュの魅力や想い
始めた当初は、なかなか真っ直ぐに打てず、1、2、3のリズムでラケットを握ってボールにあてるのもままなりませんでしたが、一年半ほどマンツーマンのレッスンが続き、しつこく反復練習をコーチにしていただき、打つ型が出来てきました。ストイックに繰り返し練習するスタイルがとても私にはフィットしているスポーツです。スカッシュを続けて5年半を過ぎますが、続けている理由は、練習スタイルがフィットしていること以外にも二つ大きな理由があります。スカッシュは比較的狭いスペースの中で競うスポーツなのですが、あらゆる角度から、あらゆる高さから、ふわっと緩い打球と思えば、高速のスマッシュがきたりして、縦横無尽に自らの身体を切り替えしながら、動きますので、多い運動量をこなす持久力と瞬発力を鍛えるのにちょうど良く、40歳を過ぎて始めましたが、学生の頃のように動ける身体を取り戻すことが出来ました。健康体を維持向上させるモチベーションを持たせてくれています。
なんとなく打てて打球を返せるようになると、ゲームを楽しむこともでき、私なんかは一人打ちの練習をすることが多かったのですが、同じスポーツクラブに通い、スカッシュを楽しんでらっしゃる方々が練習会に誘っていただくことが増え、仕事以外でのネットワークが広がったのは、もちろん、アクセンチュア株式会社で所属していたスカッシュ部の仲間ともまだ定期的に練習をしたりして、ONとOFFの人生のバランスがとても充実しています。
この歳になって、こんなに熱心に上手くなりたいと思いながら、続けてられるのも理由を上手く説明出来ていないと思いますが、これからも、自分のプレイの課題克服(常に前に出て、T位置に戻る。きちんと踏み込んで打つ)を目指しながら、スカッシュを楽しみたいと思います。

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松木 悠宣 氏(まつき ひろのり)

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35歳/Regista Capital Management Ltd.(Director)

キャリア
大学卒業後、独立系の大手ヘッジファンドに就職、その後、外資系証券会社のクレディ・スイス証券、シティーグループ証券に転職し、証券・ヘッジファンド業界のキャリアを積む。2013年から独立、国内外の富裕層や機関投資家向けの主に日本株を運用対象としたファンドを立ち上げ、現在に至る。

スカッシュとの出会い
大学時代に英国人の教授に誘われて

スカッシュの魅力や想い
自分にとって、スカッシュの魅力は、プレーしていて最高におもしろくかつチャレンジングであることと、いろんな面で効率がいいことです。
ゲームとしてのおもしろさは、トップレベルで活躍するためには他のスポーツ同様にテクニック・フィットネス・メンタルの心技体、全てが高いレベルにある必要がありますが、アマチュアレベルではスカッシュはどれかに特化しても十分に楽しめることにあると思います。例えば、フィットネスに自信がない場合は、早めにニックを狙ったり、キルショットを積極的に使ったりして短期決戦に持ち込むことも戦略の一つでしょうし、逆に体力に自信がある選手はひたすら走りまくって相手がミスするまで耐えるのも立派な戦略になります。相手の弱点や癖を見つけたら、執拗にそこを攻め続けるなどの駆け引きもスカッシュの醍醐味だと思います。
自分のレベルやコンディションに合わせて様々なプレースタイルができる一方で、やはり勝つためには、ショットの精度を高め、試合全体の流れを的確に読み、瞬時でコースを打ち分ける判断力などのスキルが要求され、チャレンジングではありますが、全てのプレーが100%自分に返ってくるところもビジネスに似ていて、過酷ではありますが、イメージ通りにいった場合は本当に気持ちいいです。また、天候に左右されず、時間も30分ラリーできれば汗だくになれ、人数も最悪一人でも一人打ちができ、心身ともにリフレッシュできるスポーツはスカッシュくらいかなと思います。忙しい社会人でも続けられる効率の良さを誇ることも大きな魅力です。
競技人口とコート数がさらに増え、よりこの素晴らしいスポーツが日本で普及することを願っています。

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